2008年4月18日金曜日

4月10日、ダライ・ラマ法王記者会見 全文

ダライ・ラマ14世、成田で緊急記者会見 (全文)


【4月10日STN RESS】

ダライ・ラマ(以後DLと表示):今回、私は特別メッセージがあって、日本に立ち寄ったわけではありません。2週間アメリカに滞在することになっていて、立ち寄っただけで、特別申し上げることはありませんが、私が常に申しあげていることは、まず人間の価値を重視するべきことだということです。この人間の価値を推進するためにアメリカへ行きます。

また、仏教徒であろうとなかろうと、大切なのは人として慈悲心を持つことだと私は常に考えています。思いやりの心は人の体にも影響を及ぼすと考えられています。穏やかな平和な心を持つことがいかに大切であるかは、実際、様々な研究において科学の分野で実験され、思いやりの心が人間の体の健康、安全につながるということも分かってきました。思いやりの心は、心身をともに健康にするということです。

また、私は仏教僧として宗教間の調和がとても大切だと思っています。今、私はこのふたつを推進することを大きな目的として渡米するのであって、政治的な目的はいっさいありません。ただ日本にトランジットで立ち寄っただけです。

しかし、多くの皆様がここにお超しになりました。好奇心や興味を持ってお集りいただいているのだと思いますので、ここからは皆さんの質問にお答えしていきます。


Q:TBSです。今、世界各地で聖火リレーを巡って混乱が起きています。どうお考えですか?

DL:私は当初から中国がオリンピックの開催国であることを指示してきました。中国は人口もかなり多い、大きな国ですし、歴史的にも長い歴史を持っていますから、オリンピックの開催国になるのに充分な国だと思っています。中国でこのようなことが起こっていますが、まったく私の姿勢に変わりはありません。
ロンドン、パリでトラブルが起こりましたが、私はサンフランシスコのチベット人に、「実際に自分たちの気持ちを表現するのは構わないが、暴力は絶対に振るべきではない」とメッセージを送りました。今の状況を引き起こした大きな原因は、中国内のチベット人たちには表現の自由が許されていない、ということです。自由に表現する人権があるにも拘らず、自由に表現できないという環境の中から憤りが生じ、こういう問題が起きたわけです。

各自が自分の気持ちを表現できる自由があるべきで、私には「黙れ」という権利はありません。そうですよね。我々は民主主義を推進しています。世界には私に反論する人もいますが、私は「黙れ」という権利は持っていません。民主主義はその自由を確保するべきです。そして、表現方法は非暴力であるべきです。
私は実際、サンフランシスコで昨日何が起こったかは、デリーからの機内で寝ておりましたので、分かりません。


Q:アジアフリーラジオの者です。中国人に対してアピールは何かありますか?

DL:私は、中国内外にいる兄弟姉妹の方々にメッセージを送りました。特に中国内にいる兄弟姉妹へ送っています。チベット自治区で起こった問題で、私は「反中国」というイメージをつけられてしまったようです。しかし、実際にはそうではないことを申し上げておきます。

私たちは中国の一部であることを受け入れています。経済的発展に関する限り、大きな利益を求めることができるのです。一方で、我々は独特な遺産を持っています。遺産には言語も、豊かなナーランダの仏教も含まれています。チベット仏教がナーランダの純粋な仏教であることは広く知られています。チベット仏教は私たち600万人のチベット人だけのものではなく、中央アジアの人々の関心事で、もっと多くの方々と共有できるものだと思います。遺産であるチベット仏教を維持していくためにも、自治が必要なのです。

同時にチベット文化、教育、環境を大切にしていくことはとても意味があることなのです。国防や外交ではなく、仏教や教育、文化や環境に対し、チベットは権威をもって、それらを保存していきたいのです。私は中国からの独立を考えているわけではありません。あくまで私たちは中国の中で「自治」を望んでいる、と言っているだけです。仏教、文化、教育、環境に関して私たちは自治を持ちたい、と考えていることをご理解していただきたいと思います。

私たちはこれを「中道」と呼んでいます。これは私たちの基本的考えです。決定はチベットの人たちが行うべきなのです。中国の人々はチベットのことに何の知識もありません。残念なことに、チベット文化は分離の考え方だと、考えているのです。

制約を設けるべきです。現実に従うべきです。自治というのは現在、言葉だけで、紙のうえのものだけです。「チベット自治区」と呼ばれる領土で、自治が行われていないのです。「経済も自治」、「軍も自治」と言われていますが、誠実に行われていないのです。ですからチベット人は深い憤りを感じているのです。チベット人は自治を求めているのであって、独立を求めているのではありません。

中国の兄弟姉妹に知ってもらいたいことがあります。政府がダライ・ラマを悪魔だと呼んでいることは残念です。それを判断するのは皆さまです。私が悪者なのか、悪魔なのか、見ていただければ分かると思います。大丈夫ですね。私はこのように人間であって、角は生えていません(笑)。

私は本当に悲しく思います。中国の方々は何も知らされず、中国政府の情報に頼っています。中国の人々は、ダライ・ラマは悪者だと思っているのです。世界各地の皆さんは、こういう状況を判断してください。そして、どうか私を助けてください。ダライ・ラマは独立を求めているのではないと、世界へ伝えてください。ダライ・ラマはそれほど悪くない、と伝えてください。

もうひとつ言いたいことがあります。中国政府はダライ・ラマがこうした危機を誘導したと国際社会に訴えました。しかし、いったい現実がどうなっているのかについては、やはりダラムサラも含めた国際機関が実際に現地に入って調査をしてください。

3月10日以降、数百名が亡くなり、数千人が逮捕、拘束されています。こういうチベットの状況に対し、徹底的な調査が必要です。調査を行ってほしいのです。

また、中国政府から、これは犯罪だという扱いをされていますが、実際、犯罪とはどういうものなのなのかをきちんと定義していただきたいと思います。今回の場合、2種類が考えられます。人によっては暴動に煽られて何らかの罪を犯す者もいます。そうした人は混乱した状況につけ込み、略奪行為に走ります。こうした人々は法律に基づいて罰せられるべきだと思います。政治的動機を持つ人もいます。私は非暴力的行為を行う者が犯罪者と呼ばれることがあってはならないと思います。ふたつを明確に区別することはきわめて重要だと思います。

そして尊敬されている弁護団が調査するべきだと思います。皆さんとこうしたことを共有したいのです。もし、皆さんがそうだ、と思われるなら、表明していただきたいですし、そうではないと思われるなら、この話は忘れてください。


Q:フランスの放送局です。次回はぜひ外国人記者クラブへおいでください。お尋ねしたいのは、ヨーロッパ諸国の団結力の不足についてです。チベットの弾圧に対し、意見の衝突が起きています。政策面の統一についてご意見いただければ、幸いです。

DL:ヨーロッパ各国は、完全に個人個人が自由を充分謳歌していると思います。EUの中での見解や意見の相違は、彼らの権利です。基本的にEUの精神を私は評価しています。共通の利益について関心を持つことは素晴らしい現実的アプローチです。それぞれ懸念、関心の持ち方も違うでしょうが、ドイツ、英国、フランスは心からの懸念を表明してくれました。私はそれを大変ありがたく思っています。


Q:中国政府はダライ・ラマがいなければすべては安定するというようなことを言っていますが、身に危険が及ぶということはあるのでしょうか。また、日本政府は非常に中国政府に遠慮しているように見えますが日本政府に対し、日本の国民に対しメッセージがあればお願いします。

DL:3月10日直後、すでに私はアピールを行いました。私から各国の首脳の方々、ロシアのプーチン大統領含め多くの指導者にメッセージを差し上げ、また多くの指導者から、懸念を表明していただいています。
私は皆さんにこう申しあげたいです。チャンスがあればチベットへいらしてください。ラサを訪問し、チベットを見て回り、中国のチベット人に何が本当に起こっているか、伝えてください。残念ですが、公の機関による発表には歪曲されたものが多く、そこから不必要な誤解が生まれているんです。

Q:イタリアについてお話がありませんでしたが、私たちイタリア人も深く懸念しています。一度、法王とはダラムサラでお会いしました。もしも奇跡が起きて、中国政府から北京オリンピック開会式に招待されたら受け入れますか?

DL:開会式ですか?現地の状況によります。中国政府が現実的なものの考え方をするようになるのであれば、私は個人的にオリンピックという大きなセレモニーを楽しみたいと思います(笑)。

Q:オリンピック前にすでに大きな報道となっていますが、終わった後、中国はますます強くなると思われます。法王に希望はありますか?

DL:状況を見守りましょう。
チベット人たちがどういう状況に置かれてきたかということ、彼らからの意思表示が明らかなサインとして出ています。チベット自治区のみならず、私が生まれた青海省やほかの省も、またウィグル自治区でも一部の人々が怒りを表明しています。

中国政府は現実を認め、現実を受け入れるべきときが来たと思います。現実にそった解決方法を見いだしてほしいのです。危機が起きるたびに暴力で抑圧するというのは、旧式なやり方です。もう時代遅れなのです。まず、現実的アプローチをするためには、現実を知らなくてはなりません。ですから情報の流れが必要なのです。透明性ある情報が不可欠です。21世紀はすべてを透明にすべきです。「国家機密」などというやり方は、時代遅れです。そうした状態から生まれるのは、疑念だけです。疑念というものは、調和のとれた社会を開発していくのは、最大の障害となります。

調和のとれた世界は信頼に基づかねばなりません。相互の尊重、平等、透明性によってもたらせるのです。これが調和のとれた社会の発展の基礎となるのです。
これから良いイメージを拡大していかなくては、中国は超大国になれないでしょう。そうなるためには、道義的正義というものが必要になります。短期的でなく、現実的なアプローチを長期的に考えるべきです。チベット、ウゥグル自治区だけの利益になるのではありません。10億人あまりの人々の利益なのです。中国自体の営利になります。中国は人口の最も多い国です。論理的に考えて、世界をよりよくするために前向きな貢献をすべきです。

そのためには、道徳的権威が欠かせません。それが私の考え方です。
また、マスコミの方々は、非常に重要な役割を担っていると私は思います。